2003年12月08日 00:00 〜 00:00
千野忠男・アジア開発銀行総裁

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会見リポート

「内向き」日本を憂慮

高橋 昭 (共同通信金融証券部次長)

旧大蔵省(現財務省)出身者の中では、一味違う。欧米と協調しつつ、それにもましてアジア重視を貫いてきた財務官経験者は少ないと言っていい。とにかくアジアへの思いは群を抜いて熱い。

アジアには光と影がある。1997年、98年ごろの金融危機などを乗り越え、「今後とも世界で最も成長率の高い地域であり続ける」と、エコノミストの立場からは楽観論に立つ。だが、世界の貧困層の3分の2はアジアに集中、使命である貧困削減は容易ではない。加えて地政学的な緊張の高まりや、テロの脅威などの不確実性は貧困をますます過酷にする。

低所得だけでなく、仕事がない、教育を受けられない、衛生水準が劣悪など。「努力すれば報いられる明日がある、と思えない状況」から脱するすべを模索し続けている。

2001年9月の米中枢同時テロを境に、それまでの経済の時代が終わり、政治・安全保障の時代へと突入したとの見方は少なくない。アナン国連事務総長の発言を引用し、著しい貧困などについて「平和とか安全保障と無関係と考えてはいけない」と戒めた。

戦後、積極的な外交を展開してきた日本について、最近は「内向き」と憂慮する。アジア開発基金(ADF)の第八次拠出をめぐる各国との交渉が当面の懸案だが、日本に対しては「人材も資源も激動のアジアに(集中)投入すべし」と明快だった。日本の対アジア安保戦略について、見直しを促しているように聞こえてならなかった。

ゲスト / Guest

  • 千野忠男 / Tadao Chino

    日本 / Japan

    アジア開発銀行総裁 / The Governor of Asian Development Bank

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