2003年12月02日 00:00 〜 00:00
坂口力・厚労相

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会見リポート

国造りの青写真を

大林 尚 (日本経済新聞編集委員)

「年金も医療も改革が微妙なときなので、なかなか物が言いにくいところもあります」という前置きのわりには、大胆かつ細心な坂口節がぽんぽんと飛び出した。

▼厚生年金の保険料率はがんじがらめに20%と考えているわけではない▼高齢者という仕事の達人を遊ばせておく手はない▼合計特殊出生率はできれば1・5くらいに回復してほしいなぁ。あくまでも独り言ですが……

日ごろから接する機会が多い記者の多くは、いつもの発言の繰り返しと受け取ったようだが、たまに聞く身には新鮮な印象が残った。小児科医としてへき地医療 に携わった経験からか、坂口さんが提起した社会保障の将来像には一本の筋が貫かれていた。多くの人が元気に長生きすれば、年金も医療も雇用も、深刻な困難 に直面することは避けられる、という考え方だ。

人は長生きすれば、年金や医療制度の世話になる時間が増え、お金がかかる存在になる。元気なら働き続けることができるし、医者にかかる機会も少なくて済 む。その実現には企業経営者の協力も不可欠だ。一見すると当たり前のことだが、超高速で進む少子高齢化のもとで、この理念を追求するのはたやすいことでは ない。「ぼつぼつ、国造りの青写真をはっきりさせなければならない」と繰り返したのは、その難しさを身にしみて感じているからだろう。

閣僚への就任は2000年末だった。すでに在任3年。小児科の先生の穏やかさと政治家としてのしたたかさがにじみ出ていた2時間15分だった。

ゲスト / Guest

  • 坂口力 / Chikara Sakaguchi

    日本 / Japan

    厚労相 / Minister for Health, Labour and Welfare

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