2003年10月20日 00:00 〜 00:00
金学俊・東亜日報社長

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会見リポート

韓国の地政学的な深い苦悩

小菅 幸一 (朝日新聞論説委員)

韓国というと、型にはまった社会と思われがちだが、例えば職業選択では、日本より極めて柔軟に横の移動をしてしまう。金学俊社長もその典型の一人だ。三年ほどの朝鮮日報記者を振り出しに、ソウル大に戻って講師から教授まで務めた後、国会議員、さらに盧泰愚政権で大統領首席報道官もこなす。そして大学経営に携わった後の大手新聞社長就任である。

日本記者クラブが外国メディア首脳をゲストに招いたのは久しぶりだそうだ。もっとも、今回は新聞経営者というより、北朝鮮問題にも精通した国際政治学者として、イスタンブールとモスクワでの学会出席の帰途、東京に寄って持論を展開したといった趣だった。

「緊迫した脅威の現存」と表現する北朝鮮の核問題で金社長は、核開発がかなりの水準にあるとする「学界の大方の見解」の一方、慎重な見方もあること、北朝鮮は核に実質的利益を見いだして「脅迫外交」「悪性外交」に依存していること、といって米国の先制攻撃論には「何よりもモラルが問われる」等々を指摘し、すべての関係国が「冷静な判断のもと、外交と交渉で最も合理的な解決策を追求すべきだ」と強調した。

韓国の置かれた地政学的な深い苦悩を表す。「日本の右傾化」を懸念し、「核武装に向かわず平和憲法を堅持するとの意思表明が北朝鮮問題の外交的解決に役立つ」と語るのは期待より願望に近い。

不透明感の強まる韓国の国内政治とか、権力とメディアとの関係など他の関心あるテーマについては、次回に期待としておこうか。

ゲスト / Guest

  • 金学俊 / KIM, Hakjoon

    韓国 / Korea

    東亜日報社長 / The Dong-a Ilbo

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