2003年10月23日 00:00 〜 00:00
加地祥文・厚労省感染症情報管理室長「SARS再発に備えて」

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会見リポート

無知こそ最大の敵

五阿弥宏安 (読売新聞論説委員)

「知識はワクチン」。控え室で揮ごうを求められた加地室長が記した言葉である。

未知のものに人々は恐怖心を抱く。恐怖心が高じるとパニックに陥る。感染症対策にとって、最大の敵は「無知」である。

それは、今冬の再流行が懸念されるSARSも同じである。SARSといえば怖いものというイメージが強い。だが、加地室長によると、海外で患者が発生していない段階で、いきなり日本で感染が広がる危険性はほとんどない。

たとえ、国内で発生しても、過度に不安になる必要はない。SARSは多くの場合、病院内や家庭内での濃厚接触で感染するのであって、街中ですれ違った程度では感染しない。

一人から数十人に感染を広げた「スーパースプレッダー」は糖尿病などの持病を抱えた高齢者が多かったが、これも病院内での処置などを通じ、医療従事者と濃厚に接する時間が長かったためだ。特別な体質の人が感染を拡大させたわけではない。

さらに、感染しても、潜伏期間を過ぎて発病し、咳をするようになるまでは、他の人に感染を拡大させる危険性は極めて少ない。

未知の感染症の正体を知れば、過度に心配する必要はなくなる。

大事なことは、院内感染の防止対策を徹底し、患者が発生しても、拡大を最小限に抑える態勢を整えることだ。迅速で的確な情報の提供も欠かせない。正しい知識こそが、パニックを防ぎ、冷静な対応を可能にする。
報道機関としても、こうした事態に十分備えておきたい。問われているのは日本社会の成熟度だ。

ゲスト / Guest

  • 加地祥文 / Yoshifumi Kaji

    日本 / Japan

    厚労省感染症情報管理室長 / Ministry of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:SARS再発に備えて

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